「なんとなく」でいい

どうして行政書士になったのですか? と聞かれることがあります。わたしは、この質問に、うまく答えることができません。いつも、どぎまぎしてしまって、「もともと大学の法学部だったので」とか、「いま高齢社会で、相続関係の仕事がしたかったので」とか、「適当に」答えています。「適当」で、ごめんなさい。

質問に答えているようで、答えていない。どの答えも、きっと「後付け」で、どれもきっと、「本心」ではないから。だから、前述のような答えをするとき、ちょっと後ろめたい気持ちになります。なんかうそついているみたいで。でも、うそではないんです。でも、なんかしっくりこない。

じゃあ、本心はどうなんだよ?って突っ込みが聞こえてきそうですが、「なんとなく」です。行政書士、「なんとなく」なったんです。

この答えに、がっかりされた方、頼りなさを感じられた方、きっといらっしゃるでしょう。そんな志の低いことでどうする?と、もしかしたらお怒りになる方がいらっしゃるかもしれません。

こういうやり取りをするとき、大学時代の就職試験を思い出します。面接で「どうして新聞記者になりたいのですか?」。必ず聞かれます。やっぱり苦手でした、この質問。でも、この質問にきちんと答えられなければ、採用はありません。だから、冷や汗をかきかき、必死で答えた記憶があります。時には、それにうまく答えられない自分を責めたりもしました。

「自分がほんとうにしたいことについては『すらすら理由が言える』はずがない」。最近読んだ本の一節に、救われた思いがしました。

内田樹「そのうちなんとかなるだろう」。内田先生は、元大学教授で、思想家、武道家。多数の著書を出されているのでご存知の方も多いと思います。内田先生は続けます。

「だって、自分のすごく深いところに根ざしている衝動とか欲望とかに淵源があるものがそうそう簡単に言語化できるはずがないじゃないですか」

「『どうしてですか?』と訊かれて、すらすらと言えるような理由ではない。それが『なんとなく』です。」と。いくら言葉を費やしても、うまく説明できない、伝えきれない思いってきっとあると思うんです。そんなこんなをひっくるめて、「なんとなく」。

さらに、iphoneを手掛けるアップル社の創業者、故スティーブン・ジョブズ氏の言葉を引用しています。「いちばんたいせつなことは、あなたの心と直感に従う勇気をもつことです。あなたの心と直感は、あなたがほんとうはなにものになりたいのかをなぜか知っているからです」(日本語訳)

今どきは、就職面接に限らず、何かを選択するにあたって、やれ、証拠を出せだの、やれ費用対効果だの、やれきちんと説明しろだの、言われます。でも、それはできません。だって、「心と直感」に従って、「なんとなく」選んでいるから。そんな生き方にもっと自信をもっていいと、背中を押された気がします。

行政書士の仕事、いま楽しいです。お客様から頼まれて、それに応えようとしているとき、何だかわくわくします。この気持ちを表現するのは難しいし、そもそも行政書士になる前には、なってからこんな気持ちを味わうなんて分からなかったし。そしてまさに、その瞬間に思うんです。「だから行政書士やりたかったのかな」と。

「なんとなく」やりたいことを選んで生きていると、きっと後悔も少ないと思います。

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