法律はだれの味方?
法律はだれの味方でしょうか? 法律は弱い者の味方? 法律はまじめに生きている人の味方? 私が尊敬している司法書士は、「法律は知っている人の味方」と言います。
私が普及に努めている「家族信託」という仕組み。信託法という法律が2007年に改正されて、以前よりも格段に、柔軟な財産管理や相続対策ができるようになりました。
特に、高齢になって、亡くなる前の約10年間、認知症や病気によって判断能力が衰える危険が高まる時期。何も対策していないと、財産が「凍結」され、預金は下ろせない、不動産は売れない、といった事態が発生していました。
一般的に知られている「後見制度」によってカバーできる問題もありますが、財産管理に自由が利かなくなることが多くなります。そこで、「家族信託」を知っていれば、元気なうちに、身近な信頼できる人に財産を託すことができ、自分に“もしも”のことが起きても、自身で築き上げた大切な財産を、「凍結」させることなく、使いたいときに自由に使える状態を維持することができるのです。この仕組みで救われる人は確実に存在します。
しかし、この「家族信託」という仕組み。世間ではまだほとんど知られていません。私が所属する一般社団法人家族信託普及協会が今年7~8月に実施した最新の調査では、家族信託という仕組みをそもそも「聞いたことがない」という人が56%にも上り、「聞いたことはあるが全く知らない」8%、「聞いたことはあるがあまり知らない」18%と合わせると、8割を超える人が、家族信託のことをよく知らない、というとても残念な結果が出ています。
一方、中小企業の代替わり「事業承継」。年を重ねた経営者の「大量引退」が目前に迫り、手を施さなければ、廃業が広がって、雇用喪失が650万人(!)に上るとの試算もある大問題です。
この喫緊の課題に、政府も様々な対策を打っていますが、中でも有力なのが「事業承継税制」。その内容の柱は、自社株式を後継者に譲り渡すときの納税負担がゼロになるというものです。
事業承継における最大の障害は、自社株式を譲渡するときに、通常多額の贈与税・相続税が発生し、その資金を工面することだと言われます。その税金を猶予して、事業承継時には税負担をしなくてよい、というのです。この制度によって救われる企業もたくさんあると思います。
しかし、この平成30年度の事業承継税制を「改正・内容とも知っている」と答えた経営者は、29.4%(東京商工会議所調査)。せっかくの制度なのに、ちゃんと知っている人が3割に満たないのです。
いつもこういった法改正、制度改正にアンテナを張っている人には届いているのかもしれません。しかし、多くの方は、日々の生活に追われて、情報収集にも限界があると思います。知っていれば使えたかもしれない法律や制度や仕組みが、知らなかったばかりに本当に必要な人には使われないまま。それでは意味がないと思います。
私も行政書士として、このような、「だれかの役に立つかもしれない情報」をキャッチし、セミナーやこのブログ、自主発行している「ほほ笑み通信」などで積極的に発信していきたいと思います。そして、「法律は困っている人の味方」というのは理想かもしれませんが、その状況に少しでも近づくように、自分にできることをやっていきたいと思います。