自分は書いたの?
「自分は書いたの?」「自分は書かないで、書こうとしている人の気持ちは分かるの?」
先日、私の胸にグサッと突き刺さった言葉です。そして、何のことかというと、遺言です。私が専門とする「家族信託」のセミナーで、講師から指摘されました。
行政書士を仕事として生きていこうと決めて、自分の専門を「相続」と定めました。その理由は、高齢社会できっと需要が見込まれるという「計算」はもちろんありましたが、それよりも、こんなに関心が高いのに、身近に専門家がいないような気がして、そういうポジションに自分が付けば、多くの人の役に立てるのではないかと考えたことが大きかったと思います。
遺言作成のお手伝いは、私の事務所の「主力商品」です。お客様の意向を十分くみ取りながら、どうすれば円満な相続に導けるか、私の腕の見せ所です。
その遺言を作ることをプロとする人間が、自分で遺言を作ったことがないとすれば、どうでしょうか。たとえて言うなら、自動車のセールスマンが、自社の車に乗ってない、とか、保険の外交員が、自社の保険に入っていない、といったことになりましょうか。
それって、やっぱり、大問題ですよね。自分で書いてみて、「良かったから人に勧めてみよう」となるわけですし、自分で書いたことがあるから、書こうとしている人の気持ちに寄り添える、遺言のような、人の死にかかわるデリケートなものは、特にそうではないでしょうか。
自分で書いてなくても、自分で乗ってなくても、自分で加入してなくても、人に勧めることはできます。でも、その経験の差は、結局、お客さんとの信頼関係に重大な影響を及ぼすと思います。
そして、冒頭の言葉を投げかけた先生は、こうもおっしゃいました。「なぜプロが遺言書かないんですか? 死なないんですか?」。ものすごい皮肉です(笑)
行政書士に登録して間もないんで、とか、まだ若いので、は言い訳になりません。人はいつ死ぬか分からないんですから。そして、「人はいつ死ぬか分からない」と言って、遺言を勧めているのは、まぎれもない、行政書士の私自身なのですから。
これは、遺言に限りません。これから、私は、人に勧めることは、自分が試す(経験する)ことにしました。そして、その経過と、そのとき感じたことを、このブログで随時ご紹介していきたいと思います。
中でも、遺言と、我が家の遺産分割協議書の作成は、早急に取り掛かって、できれば年内にも仕上げることができればと考えています。
そんなことを決意してから、大変ささいなことではありますが、「やってみようとした」ことがあります。来月10日に講演会を開催するのですが、私は、家族の間でとても話しづらい相続を、話しやすくするコツについて話します。その話しやすい環境を作りだすアイテムを考えて、それを実家の母にきょう試そうとしました。
しかし、失敗しました。切り出すタイミングがなかったのです。でも、近いうちにきっと機会を作って、成功してみせます。そして、そんな失敗談も含めて、みなさんにご披露して、みなさんのお宅では、相続の話がざっくばらんにできるよう、アドバイスできたらいいなと考えています。